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耳鼻咽喉科

78歳男性、慢性副鼻腔炎(好酸球性副鼻腔炎疑い)(附属病院耳鼻科 大久保公裕)

概要

10年ほど前から後鼻漏と鼻閉、嗅覚障害を自覚していた。鼻症状の増悪時にマクロライド系抗生剤を投与すると若干の改善が認められるが、症状の消失には至らず、再発性であることから、気管支喘息で通院中の内科から鼻症状の精査目的に当科に紹介となった。
経過中、聴覚の異常は認めなかった。
喘息はステロイド吸入薬、抗ロイコトリエン薬、テオフィリン製剤を使用しているが、時折発作を起こしていた。

初診時現症

〈一般身体所見〉
身長162㎝、体重56kg。
呼吸状態は安定しており、呼吸苦は認めなかった。
鼻内所見では両側中鼻道と嗅裂に多発性の鼻茸を認め、特に嗅裂の鼻茸が著明であった。粘調度の高い鼻汁を認めた。両側鼓膜所見は正常であった。

主な検査所見など

〈血液検査〉
血液一般検査 白血球数正常、血液像 好酸球18.0%(0.2-7.0)
生化学検査 正常
非特異的IgE 614IU/ml(170以下)
特異的IgE(クラス) スギ4、ヒノキ2、ヤケヒョウヒダニ3、ハウスダスト3、アスペルギルス1、カンジダ2
〈鼻汁検査〉
鼻汁好酸球数 (3+)
〈嗅覚検査〉
基準嗅覚検査 嗅覚閾値平均値 5.8 (正常1.0以下、脱失5.6以上)
アリナミンテスト 潜伏時間 15秒(正常10秒前後)
持続時間 72秒(正常60秒前後)

〈画像検査〉
副鼻腔CT検査:上顎洞の陰影は粘膜肥厚程度であったが、篩骨洞には軟部陰影が充満しており篩骨洞優位の副鼻腔炎であった。そのほかの前頭洞・蝶形骨洞にも軟部陰影が充満していた。骨破壊像は認めなかった。

診断と鑑別診断

細菌性の副鼻腔炎では一般的には両側性の上顎洞優位の副鼻腔炎となるが、この症例では両側性ではあるが篩骨洞優位の副鼻腔炎であり、嗅裂・中鼻道に多発性鼻茸が認められた。また、喘息を合併しており、白血球の血液像では好酸球が18.0%と著明に上昇しており、慢性副鼻腔炎の中でも好酸球性副鼻腔炎が最も考えられた。

CT検査で篩骨洞優位の陰影を認める。

鼻症例1 診断基準 JESRECスコア

鼻症例1 診断基準 JESRECスコア.xlsx

治療方針

好酸球性副鼻腔炎は有効な治療が未確立で、副鼻腔手術を行っても易再発性で難治性であるが、手術によって病的粘膜の除去や隔壁の除去による副鼻腔の単洞化を行う事で現在の症状を軽減できることと、術後の局所治療の有効性を高められる可能性を説明し、手術の方針とした。

治療経過の総括と解説

好酸球性副鼻腔炎は高度の鼻閉と嗅覚障害を示し、両側性に多発する鼻茸、粘調な鼻汁、篩骨洞優位で成人発症の難治性副鼻腔炎が特徴の原因不明の疾患である。抗菌薬は無効で経口ステロイド薬のみに反応するが、投薬を中止すると再燃する。副鼻腔手術を行い鼻茸などの病的粘膜を除去してもすぐに再発してしまう難治性疾患である。実際平成27年7月から国の難病に指定されている。気管支喘息や中耳腔に好酸球浸潤が著明な難治性中耳炎(好酸球性中耳炎)を合併することも多い疾患であり、高度の鼻閉により気管支喘息の管理にも影響を与える。診断基準があり、表のように両側性か、鼻茸の有無、CTで篩骨洞優位か、末梢血好酸球(%)によってスコアをつけ、鼻茸組織中の好酸球数70個以上(400倍視野)をもって確定診断としている。この症例も両側性で多発性鼻茸を認め、CT検査で篩骨洞優位の陰影で、末梢血好酸球数が18%と著明に上昇しており好酸球性副鼻腔炎と考えられた。術前に鼻茸組織の生検を行っていないので確定診断には至らないが、手術時の検体で確定診断を行う予定であった。手術の予定としていたが、頭皮の耐性菌感染症を発症したため手術を延期し、鼻噴霧ステロイド薬で外来経過観察中である。

参考文献